国内優先権主張出願と分割出願とで留意すべき新規性喪失の例外の手続きの違いは何か?
出願Aで新規性喪失の例外の適用の申請が正しく行われていたとしましょう。
さて、出願Aに基づいて、次の出願を行うことを考えてみます。
(方法1)出願Aを基礎出願とする国内優先権主張出願として出願Bを行う
この場合、各出願Bで行わなければならない手続が異なりますが、うっかり間違えかねませんので、とても注意が必要です。
具体的には、新規性喪失の例外の適用の申請には、2つの提出すべき書面があります。なお、これらの書面の提出については、どちらも、30条3項に記載されています。
【手続1】適用を受ける旨を記載した書面の提出(出願と同時)
【手続2】新規性喪失発明であることを証明する書面の提出(出願日から30日以内)
さて、出願Aに基づいて、次の出願を行うことを考えてみます。
(方法1)出願Aを基礎出願とする国内優先権主張出願として出願Bを行う
(方法2)出願Aを原出願とする分割出願として出願Bを行う
この場合、各出願Bで行わなければならない手続が異なりますが、うっかり間違えかねませんので、とても注意が必要です。
具体的には、新規性喪失の例外の適用の申請には、2つの提出すべき書面があります。なお、これらの書面の提出については、どちらも、30条3項に記載されています。
【手続2】新規性喪失発明であることを証明する書面の提出(出願日から30日以内)
なお、【手続1】は実務上は、別途の書面を提出するのではなく、願書において、【特記事項】として記載します。
さて、(方法1)の場合には、【手続1】と【手続2】をとる必要があります。すなわち、国内優先権主張出願の願書において新規性喪失についての【特記事項】の記載は必要です。しかし、【手続2】については、実際の提出はせずに、「その旨を願書に表示することによる省略」ができます。「省略可能」と呼ばれることもありますが、あくまで、その旨を願書に表示すること省略することができるだけで、その旨を願書に表示しないのであれば、省略できません。なお、省略の根拠は施行規則第31条1項です。
第三十一条 特許法第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願をしようとする場合において、先の出願について提出した証明書であつて同法第三十条第三項の規定によるものが変更を要しないものであるときは、その旨を願書に表示してその提出を省略することができる。
これに対し、(方法2)の場合には、分割出願において、【手続1】も【手続2】もとる必要はありません。44条4項において、これらの30条3項の書面について、「当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。」とされているからです。したがって、分割出願の願書において新規性喪失についての【特記事項】の記載もいらないわけです(もちろん、分割出願についての【特記事項】の記載は必要です。)。また、証明書の提出はいりませんし、証明書の提出を省略する旨の記載さえもいりません。
うっかり、分割出願の場合と同様に、国内優先権主張出願において、何もしなくて当然に適用を受けられると考えると、重大なことにつながりかねません。