日本への国内移行時の国内書面提出期間を絶対に死守する(184条の4と184条の5)
国内書面提出期間を絶対に死守するのは我々代理人にとって、とてつもなく重要なことです。ただ、今回は、もしももしも、懈怠した場合にはどうなるかを考えてみます。結果は知っている人は多いですが、条文操作がやや複雑かと思います。
PCT出願から日本への国内移行(national phase entry)するためには、国内書面提出期間、つまり優先日から30月(184条の4)までに国内書面を提出しなければなりません(184条の5)。これは、184条の5から明らかなとおり、PCT出願が日本語特許出願であるか、外国語特許出願であるかを区別していません。
そして、面白いことに、184条の5第2項によると、国内書面を全く提出しない場合には、補正命令がくると規定されています。ここでも、日本語特許出願と外国語特許出願は区別されていません。理屈的には、日本に対して何らの手続をとらない場合、日本語特許出願であっても外国語特許出願であっても、補正命令がきてもおかしくないように感じる人もいるかもしれません。補正命令がくる=リカバリーのチャンスがあるということです。
しかしながら、そうはとんやはおろさないわけです。どうなっているかというと、外国語特許出願の場合には、原則として国内書面提出期間内に提出する必要があり(184条の4)、提出しない場合には、PCT出願が取下擬制されます(184条の4第3項)。
したがって、国内書面提出期間経過時に取下擬制されている(つまり死んでいる出願)に対して、補正命令はいまさら不要というわけで、外国語特許出願の場合には、何もせずに国内書面提出期間が過ぎれば、もういかんともしがたいわけです。
この点、青本にも次のように記載されています。
「なお、外国語特許出願の場合は、明細書及び請求の範囲の翻訳文が所定の期間内に提出されないときは出願が取り下げられたものとみなされるため、翻訳文が提出されていることが本号の補正の対象となるための前提である。」
したがって、われわれ代理人は、国内書面提出期間(つまり優先日から30月)を命がけで死守する必要があるわけです。先日は、30月の最終日の午後11時25分(つまり残された時間はたったの35分)に欧州の代理人から国内移行の依頼があり(多分、日本への移行期限を勘違いしていたのかもしれませんが詳しい事情は関知しません。)、飛び込みの依頼だったので断ろうかと思いましたが、「結果は保証しませんが、死ぬほど努力します」、ということで引き受けました。そこから、必死に書類を作成して、結果として、午後11時55分には国内書面を提出することができ、出願を死守することができました(この場合には翻訳文提出は国内書面提出日から2月もらえることになります。)。それまでにまったくやりとりの無い事務所だったので、南条なら夜遅くまでいる可能性がある、と思って推薦!?してくれた別の欧州の代理人の目論見が見事にあたったようです。代理人のネットワークや口コミって以外と大事だと思います。
それはともかく、上の話を少し整理しますと、
(1)日本語特許出願⇒国内書面提出期間に日本へ何らの手続もしないなら、国内書面提出期間経過後に補正命令がかかる(救済の余地あり)
(2)外国語特許出願⇒国内書面提出期間に日本へ何らの手続もしないなら、国内書面提出期間経過後に問答無用で取下擬制になる(翻訳文を出しているが国内書面を出していない場合には、補正命令がくるでしょう。)
ということです。あくまでPCT出願が日本語特許出願か外国語特許出願が分かれ目ですので、PCT出願の基礎出願がどこの国の何語の出願かなどとは全く関係なはずですので、御注意下さい。
とはいえ日本語特許出願の場合に救済の余地があるとしても、絶対に利用しようなどとは思わず、優先日から30月以内の国内書面の提出は絶対的に守らなければなりません!弊所では徹底しています(補正指令は、PCT出願の代理人のところではなく、出願人のところにいくはずなので、なおさら恥ずかしすぎますし、それどころか、絶対に信用を失墜するでしょう。)
上の文章で歯切れが悪い(はずなので、等)のは、弊所は相応するメリットが無い限り、無駄に危ないリスクはとらないので、経験したことがないからです。それはともかく、条文の作りはとてもよくできていて面白いですね。
外国語特許出願の場合に、国内書面提出期間に、何らの手続をとらないなら、(ほぼ)即OUTになるのは厳し過ぎる気もしますが、しかし、みなし全指定の時代ですから、全てのPCT出願について、「日本に国内書面でてないけど大丈夫?」などと、日本の特許庁が聞いて回る(つまり、補正命令を出す)のも現実的ではないともいえましょう。そういう意味でも理に適っているといえそうです。
PCT出願から日本への国内移行(national phase entry)するためには、国内書面提出期間、つまり優先日から30月(184条の4)までに国内書面を提出しなければなりません(184条の5)。これは、184条の5から明らかなとおり、PCT出願が日本語特許出願であるか、外国語特許出願であるかを区別していません。
そして、面白いことに、184条の5第2項によると、国内書面を全く提出しない場合には、補正命令がくると規定されています。ここでも、日本語特許出願と外国語特許出願は区別されていません。理屈的には、日本に対して何らの手続をとらない場合、日本語特許出願であっても外国語特許出願であっても、補正命令がきてもおかしくないように感じる人もいるかもしれません。補正命令がくる=リカバリーのチャンスがあるということです。
しかしながら、そうはとんやはおろさないわけです。どうなっているかというと、外国語特許出願の場合には、原則として国内書面提出期間内に提出する必要があり(184条の4)、提出しない場合には、PCT出願が取下擬制されます(184条の4第3項)。
したがって、国内書面提出期間経過時に取下擬制されている(つまり死んでいる出願)に対して、補正命令はいまさら不要というわけで、外国語特許出願の場合には、何もせずに国内書面提出期間が過ぎれば、もういかんともしがたいわけです。
この点、青本にも次のように記載されています。
「なお、外国語特許出願の場合は、明細書及び請求の範囲の翻訳文が所定の期間内に提出されないときは出願が取り下げられたものとみなされるため、翻訳文が提出されていることが本号の補正の対象となるための前提である。」
したがって、われわれ代理人は、国内書面提出期間(つまり優先日から30月)を命がけで死守する必要があるわけです。先日は、30月の最終日の午後11時25分(つまり残された時間はたったの35分)に欧州の代理人から国内移行の依頼があり(多分、日本への移行期限を勘違いしていたのかもしれませんが詳しい事情は関知しません。)、飛び込みの依頼だったので断ろうかと思いましたが、「結果は保証しませんが、死ぬほど努力します」、ということで引き受けました。そこから、必死に書類を作成して、結果として、午後11時55分には国内書面を提出することができ、出願を死守することができました(この場合には翻訳文提出は国内書面提出日から2月もらえることになります。)。それまでにまったくやりとりの無い事務所だったので、南条なら夜遅くまでいる可能性がある、と思って推薦!?してくれた別の欧州の代理人の目論見が見事にあたったようです。代理人のネットワークや口コミって以外と大事だと思います。
それはともかく、上の話を少し整理しますと、
(1)日本語特許出願⇒国内書面提出期間に日本へ何らの手続もしないなら、国内書面提出期間経過後に補正命令がかかる(救済の余地あり)
(2)外国語特許出願⇒国内書面提出期間に日本へ何らの手続もしないなら、国内書面提出期間経過後に問答無用で取下擬制になる(翻訳文を出しているが国内書面を出していない場合には、補正命令がくるでしょう。)
ということです。あくまでPCT出願が日本語特許出願か外国語特許出願が分かれ目ですので、PCT出願の基礎出願がどこの国の何語の出願かなどとは全く関係なはずですので、御注意下さい。
とはいえ日本語特許出願の場合に救済の余地があるとしても、絶対に利用しようなどとは思わず、優先日から30月以内の国内書面の提出は絶対的に守らなければなりません!弊所では徹底しています(補正指令は、PCT出願の代理人のところではなく、出願人のところにいくはずなので、なおさら恥ずかしすぎますし、それどころか、絶対に信用を失墜するでしょう。)
上の文章で歯切れが悪い(はずなので、等)のは、弊所は相応するメリットが無い限り、無駄に危ないリスクはとらないので、経験したことがないからです。それはともかく、条文の作りはとてもよくできていて面白いですね。
外国語特許出願の場合に、国内書面提出期間に、何らの手続をとらないなら、(ほぼ)即OUTになるのは厳し過ぎる気もしますが、しかし、みなし全指定の時代ですから、全てのPCT出願について、「日本に国内書面でてないけど大丈夫?」などと、日本の特許庁が聞いて回る(つまり、補正命令を出す)のも現実的ではないともいえましょう。そういう意味でも理に適っているといえそうです。