投稿

ラベル(特許権の延長)が付いた投稿を表示しています
※投稿の検索は、右上のを、ラベル・リンク集・アーカイブは左上のをクリック
ホーム |  弊所

韓国での「塩違いの同一有効成分」に対する延長された特許権の効力についての大法院判決(ソリフェナシン)

先発品の有効成分と後発品の有効成分が「塩」において、違いがある場合に、物質特許について延長された特許権の効力が及ぶかが争われていましたが、韓国の大法院は、この点について、判決を下しました(大法院2017ダ245798 2019年1月17日)。 韓国の法体系や裁判例は従前は日本と似通っていたのですが、韓米FTAの発効により、むしろ欧米の制度に近いものとなりました。また、日本ではパシーブカプセル事件最高裁判決(平成23年4月28日)以降、混乱が生じたままになっていますが、韓国では同様の条文について、そのような解釈をとっていません。この点でも日本とは異なる実務になっています。 その前提ですが、最高裁判決は、有効成分・治療効果・用途の同一性を中心として判断しなければならない、と述べた上で、当業者が容易に選択できる程度の塩の相違については、治療効果や用途が実質的に同一であれば、特許権の効力が及ぶとしました。 その結果、大法院(最高裁ですね)は特許法院(ざっくりいえば知財高裁みたいなものですね)の判決(特許法院2016ナ1929 2017年6月30日)を破棄して、差し戻しました。 再び審理は特許法院に戻りますが、同じ結論となる可能性が高いと予想されそうです。 今後韓国では、「塩違いの同一有効成分医薬品」について、先発品メーカーが有利になりそうですが、最高裁の基準での「当業者が容易に選択できる程度の塩の相違」かどうか、などについての争い方は残るように思います。 ちなみに、原告はアステラス製薬(特許権者)で、 被告はコアファームバイオです。また、有効成分は、ソリフェナシンで、先発品はコハク酸塩の形態で、後発品はフマル酸塩の形態でした。過活動膀胱の治療薬です。

オキサリプラチン知財高裁大合議判決

ついに知財高裁判決が出ました。 予想された範囲内での判決だと思います。 そして、本大合議判決の裁判官のせいではまったくありませんが(もともとは、存続期間延長の登録要件についての最高裁判決に端を発する問題ですので。)、この先、10年、20年は、予見可能性が低い部分が残ることになりますね。 一方で、物質特許などについては、それなりに予見可能性が高まったとはいえそうです。 同判決にも記載されているとおり、中身からすれば、技術的範囲に属していないわけですから、延長された特許権の効力が及ぶかどうか判断する必然性は無かったといえますが、一応、大合議としての見解を示すべき事案なり時期だったのでしょう。 以下、少し判決文を見ていきます。 医薬品の承認に必要な審査の対象と なる事項は , 「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その 他の品質,有効性及び安全性に関する事項」であり,これらの各要素によ って特定された「品目」ごとに承認を受けるものであるから, 形式的には これらの各要素が「物」及び「用途」を画する基準となる。  もっとも,特許権の存続期間の延長登録の制度趣旨からすると,医薬品 としての 実質的同一性 に直接関わらない審査事項につき相違がある場合に まで,特許権の効力が制限されるのは相当でなく,本件のように医薬品の 成分を対象とする物の特許発明について, 医薬品としての実質的同一性に 直接関わる審査事項は,医薬品の「成分,分量,用法,用量,効能及び効 果」である (ベバシズマブ事件最判)ことからすると,これらの範囲で「物」 及び「用途」を特定し,延長された特許権の効力範囲を画するのが相当で ある。 アバスチン最判を踏襲して、 医薬品としての実質的同一性に 直接関わる審査事項は,医薬品の「①成分,②分量,③用法,④用量,⑤効能及び効 果」である としています。 そして, 「成分,分量」は,「物」それ自体の客観的同一性を左右する 一方で「用途」に該当し得る性質のものではないから,「物」を特定する 要素とみるのが相当であり, 「用法,用量,効能及び効果」は,「物」そ れ自体の客観的同一性を左右するものではないが,前記のとおり「用途」 に該当する ものであるから,「用途」を特定する要素とみるのが相当である。...

ジェネンティック事件・知財高裁大合議判決(存続期間延長)その2

さきに述べた ジェネンティック事件・知財高裁大合議判決 の追記ですが、今回は、同判決における延長された特許権の効力についての傍論について。。。 (2) 特許法68条の2の「政令で定める処分の対象となつた物」及び「用途」に係る特許発明の実施行為の範囲について    ア 「政令で定める処分」が薬事法所定の医薬品に係る承認である場合,存続期間が延長された特許権の効力が,薬事法の承認の対象になった物(物及び用途)に係る特許発明の実施行為のうち,いかなる範囲に対してまで及ぶかについては,前記のとおり,特許権侵害訴訟において検討されるべき事項であるといえるが,関連する範囲で,便宜検討することとする。   イ 薬事法14条1項は,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定し,同項に係る医薬品の承認に必要な審査の対象となる事項は, 「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」 (同法14条2項,9項)と規定されている。このことからすると,「政令で定める処分」が薬事法所定の医薬品に係る承認である場合には, 常に「効能,効果」が審査事項とされ,「効能,効果」は「用途」に含まれるから, 同承認は,特許法68条の2括弧書きの「その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合」に該当するものと解される。   ウ 薬事法の承認処分の対象となった医薬品における 「政令で定める処分の対象となった物及び用途」 の解釈については,特許法68条の2によって 存続期間が延長された特許権の効力の範囲を,どのような事項によって特定すべきかの問題である から,特許権の存続期間の延長登録の 制度趣旨(特許権者が,政令で定める処分を受けるために,その特許発明を実施する意思及び能力を有していてもなお,特許発明の実施をすることができなかった期間があったときは,5年を限度として,その期間の延長を認めるとの制度趣旨) 及び 特許権者と第三者との公平 を考慮した上で, これを合理的に解釈すべき である。なお,医薬品関連特許にも様々なものがあり,これを一様に論じることは困難であるため,延長登録された特許権の効力に...

ジェネンティック事件・知財高裁大合議判決(存続期間延長)

知財高裁大合議判決(延長)が出ました。。。 飯村判事がご退官される前に、きっちりと、判決が出ましたね。。。 判決は こちら 。 さて、判決の重要な部分を検討します。 審査官(審判官)が,当該出願を拒絶するためには, A 「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」 (第1要件),又は, B 「『政令で定める処分を受けたことによって禁止が解除された行為』が『その特許発明の実施に該当する行為』には含まれないこと」 (第2要件) のいずれかを選択的に論証することが必要となる。  審査官(審判官)は、延長登録出願を拒絶するには、上記の第1要件または第2要件を論証しなければならないわけです。 医薬品の成分を対象とする特許(製法特許,プロダクトバイプロセスクレームに係る特許等を除く。)については,薬事法14条1項又は9項に基づく承認を受けることによって 禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲 は,上記審査事項のうち「名称」,「副作用その他の品質」や「有効性及び安全性に関する事項」を除いた事項 (成分,分量,用法,用量,効能,効果)によって特定される医薬品 の製造販売等の行為であると解するのが相当である。 先ず、この解釈をおきます。これは、一連の近時の知財高裁の裁判例の根底に脈々と流れている解釈です(以下、「本判決のキモ」と適宜、呼びます。)。この解釈を措くことで、従来の特許庁の審査基準(発明特定事項(+用途)説)とは全く異なる結論が導かれます。 ウ 本件先行処分では, 「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。」 との用法・用量によって特定される使用方法による本件医薬品の使用行為,及び上記使用方法で使用されることを前提とした本件医薬品の製造販売等の行為の禁止は解除されておらず,本件処分によってこれが解除されたのであるから,本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち,「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」との要件(前記第1要件)を充足していないことは,明らかである。本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち...

特許権の存続期間の延長の審査基準(案)の問題点を考えてみたい

平成 23 年 11 月 2 日に特許庁は、「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する意見募集を公表しました。そして、意見書提出期間は平成 23 年 12 月 1 日まででした。 「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する意見募集 「特許・実用新案 審査基準 第Ⅵ部 特許権の存続期間の延長」新旧対照表(案) 産業構造審議会知的財産政策部会 特許制度小委員会 特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ「第 7 回ワーキング・グループの配付資料」「資料 2 審査基準改訂案における現行運用からの変更点について」 ※ 審査基準案だけよんでもややわかりにくいのですが、意見募集の際に、「審査基準改訂案については、こちらのサイトの第 7 回ワーキング・グループの配付資料を御参照ください。」と記載されており、理解の一助になります。 特許庁は、審査基準改訂案の基本方針として、以下のように述べています。 第67条の3第1項第1号における「特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった」についての考え方が、以下の要件に合致するものとなるように、審査基準を改訂する。 ○最高裁判決(平成 21 年(行ヒ)第 324 から 326 号)と齟齬しないこと。 ○最高裁判決が判示した先行処分が特許発明の技術的範囲に属しない場合を含め、どのようなケースであっても一貫した説明ができること。 最高裁は、極めて、言葉少なしでして、最高裁判決の射程が及ばないところについて、どのようにすればいいのか、という難題を特許庁は抱え込むことになりました。最高裁判決の原審の知財高裁判決は、もう少し言葉が多かったのですが、結局、勇敢にも、特許庁は、原審の知財高裁判決とは同一とはいえない、新しい考え方を提唱しました。それは、従来の「有効成分及び用途」という考え方から脱却するも、「クレームの発明特定事項及び用途」という考え方を採用するものです。 さて、審査基準(案)と第 7 回ワーキング・グループの配付資料(特に、「資料2 審査基準改訂案における現行運用からの変更点について」)をざっと読み解きながら、果たして、新たな審査基準(案)が、基本方針のとおり、「どのようなケースであっても一貫した説明ができる」...

欧州での合剤の特許権の延長(C-322/10とC-422/10)

合剤についてのECJの判決がついに出ました。侵害テストと保護テストについて、一応の決着を見ました。 今回は JETROのリリース に、やや分かりにくさがあるように思います。 C-322/10 1. Article 3(a) of Regulation (EC) No 469/2009 of the European Parliament and of the Council of 6 May 2009 concerning the supplementary protection certificate for medicinal products must be interpreted as precluding the competent industrial property office of a Member State from granting a supplementary protection certificate relating to active ingredients which are not specified in the wording of the claims of the basic patent relied on in support of the application for such a certificate. 2. Article 3(b) of Regulation No 469/2009 must be interpreted as meaning that, provided the other requirements laid down in Article 3 are also met, that provision does not preclude the competent industrial property office of a Member State from granting a supplementary protection certificate for a combination of two active ingredients, corresponding to that specified in the wording of the claims...

登録していない通常実施権を有する者が受けた処分に基づく特許権の存続期間の延長登録出願の実務の転換点に際して

特許庁からの重大なありがたいアナウンスです。 通常実施権の登録という制度が廃止されるので、延長のために登録する人は、平成24年3月31日までに登録を受けるべし、との案内です。 従来の実務を大幅に制約するにもかかわらず、5カ月しか準備期間がないのは、とても性急な気がします。しかも、申請してもすぐに通常実施権が登録されるわけでもないので。。。 間に合わなかった人は、ちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまいますが、なんとか、契約を上手くまいて、解消を目指すことになるのでしょう。法改正の余波といえば、余波ですね。 改正法の施行前に出願される延長登録出願については注意が必要ですね。 特に、注意喚起が届きにくい外国の製薬会社はトラブルに巻き込まれそうなので留意が必要となるでしょう。 ------(以下、引用)--------------------- 登録していない通常実施権を有する者が受けた処分に基づく特許権の存続期間の延長登録出願についてのお知らせ 平成23年11月2日 調整課 審査基準室 工業所有権制度改正審議室  特許法等の一部を改正する法律(平成 23 年法律第 63 号)の施行日前にされた特許権の存続期間の延長登録出願(以下、「延長登録出願」という。) については、通常実施権者が第 67 条第 2 項の政令で定める処分(以下、「処分」という。)を受けていたとしても、通常実施権を登録していなければ、第 67 条の 3 第 1 項第 2 号に該当し、拒絶理由が生じることになります。  通常実施権の登録は、延長登録の査定までに行えばよいこととしているため(審査基準第Ⅵ部 3.1.2 参照)、上記拒絶理由の通知を受けた後に通常実施権を登録することで、上記拒絶理由を解消することが可能です。  しかし、改正法により通常実施権の登録制度が廃止され、通常実施権の登録はできなくなります。  このため、 改正法の施行日前の延長登録出願であって、 登録していない通常実施権を有する者が受けた処分に基づく延長登録出願は、改正法の施行日以降に通常実施権を登録することで、上記拒絶理由を解消することができなくなります。  よって、すでに上記拒絶理由が通知された延長登録出願、及び、今後上記拒絶理由が通知されうる延長登録出願について、通常実施権を登録することで上記拒絶理由...

特許権の延長制度を巡る最高裁判決の余波(審査基準)

ご存知のとおり、製剤特許の延長に関して、最高裁の判断が出たので、良しも悪しくも、審査基準は改訂されざるを得ない。とはいえ、最高裁の判断の射程が微妙である。 それは、改訂作業中の特許庁の判断をひとまず待つとしても、おそらく、ある意味とばっちりをくらいそうなのは、製法特許だろう。 審査基準 (なお、平成13年4月の Q&A )によると、 ( ⅲ ) 物の製法の発明がクレームされている場合には、その製法で得られる物と処分を受けた物を 比較する。製法の比較はしない。 とされているが、最高裁の判断だと、製法の比較をしないのでは延長に値するのか、そもそも、微妙である。実施が制限されていたとは当然いえないのではないか。真面目に、条文を考えれば、この製法特許の実務の根拠は、多分に歴史的なものにすぎず、延長に値するのか、そもそも疑わしい。まあ、実益も大きくないのかもしれないが。今回の最高裁判決は、延長制度の現代的意義を実定法に基づいて検討し直すよい機会だと思うが、製法特許の延長の必要性と法的根拠はあやふや(とりわけ、製法の比較をしない点を含め)と言わざるを得ないだろう。 特許庁がこの点まで、検討し直すのか、とりあえず、手付かずにするのか、興味深い。
←現在のランキングは!?(2017年4月1日~試用中)
コメントフォーム

記事にコメントあればどうぞ(★のみ必須)※返信は確約できません

名前

メール *

メッセージ *

よく読まれた投稿(ベスト10)