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パリ優先権と国内優先権は、排他的ではありません。重畳的に主張可能です。


パリ優先権と国内優先権は、排他的ではありません。出願人が選択する場合もあれば、重畳的に主張し得る場合もあります。以外と誤解されてそうな話。誤解の原因がPCTがからむ場合だと思うので、少し解説を試みます。
(1)PCT出願(日本を指定国に含む)の基礎出願が日本出願だけの場合の日本での取り扱い
つまり、
・基礎出願:日本出願だけ
・主張出願:PCT出願(日本を指定国に含む)
これは以下のPCT8(2)(b)の規定が明確に存在するため、いわゆる自己指定になります。そうすると、我が国では、国内優先権になります。これはまあ、実務家なら、誰でも知っておくべきことでしょう。念のためにPCT8条を掲載します。
第八条 優先権の主張(1) 国際出願は、規則の定めるところにより、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国において又は同条約の締約国についてされた先の出願に基づく優先権を主張する申立てを伴うことができる。(2)(a) (b)の規定が適用される場合を除くほか、(1)の規定に基づいて申し立てられた優先権の主張の条件及び効果は、工業所有権の保護に関するパリ条約のストックホルム改正条約第四条の定めるところによる。(b) いずれかの締約国において又はいずれかの締約国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴う国際出願には、当該締約国の指定を含めることができる。国際出願が、いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内法令の定めるところによる。
次に逆のパターンを考えます。
(2)国内出願の基礎出願がPCT出願(日本と他国を指定国に含む)だけの場合の日本での取り扱いの日本での取り扱い
つまり、
・基礎出願=PCT出願(日本と他国を指定国に含む)だけ
・主張出願=国内出願
これは、国内優先権かパリ優先権かを選択できる、と審査基準上、記載されています。これは、条文上、「これだっ」というどんぴしゃな根拠はないのですが、いってみれば、国内優先権の要件(日本→日本と考える)もパリ優先権の要件(他国→日本と考える)も満たすということと理解できます。ただ、結局基礎は全く同じPCT出願ですから両方を主張するとこんがらがるので、「選択できる」とされています。ただ、注意したいのは、国内優先権を選択した場合には、後の出願、つまり、国内出願の出願時において、出願人が同一でなければ、優先権の効果が認められないという悲劇を招きます。この点からはパリ優先権を選択しておいた方が無難かもしれません。
これもまあ、そんなに問題はないかと思います。少し気になるのは、次の場合です。
(3)PCT出願(日本を指定国に含む)の基礎出願がPCT出願(日本と他国を指定国に含む)だけの場合の日本での取り扱い
つまり、
・基礎出願=PCT出願(日本と他国を指定国に含む)だけ
・主張出願=PCT出願(日本を指定国に含む)
この場合には、これは審査基準上は、パリ優先権になる、とされています。つまり(2)の場合と異なり、出願人が選択することができません。さてこの理由を考えてみましょう。大きな理由付けは、PCT8(2)(b)の規定に該当しない(基礎が、日本のみではないから)ので、自己指定にはならず、原則どおり、PCT8(2)(a)が適用されるから、ということになるでしょう。
上記はPCT出願が関係する場合(つまり、より複雑な場合)について説明しましたが、全然PCT出願が関係しない国内出願時であっても、当然ながら、パリ優先権と国内優先権を重畳的に主張することができます。(2)のパターンの「選択する」に惑わされて、パリ優先権と国内優先権を同時に主張できないと誤って認識するむきがありますが、それは全くの間違いですので気をつけましょう。米国出願からパリ優先権を主張しつつ、同時に国内出願から国内優先権を主張しつつ、日本に国内出願をすることは許されています。そのような場合の記載方式についても施行規則にも記載されていますし、また、特許法432項が、パリ優先権と国内優先権の同時主張を前提とした規定ぶりとなっていることからも明らかです。

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