意匠登録出願においてPCT出願に基づく優先権を主張できるか?
意匠登録出願においてPCT出願に基づく優先権を主張できるか?という問題があるわけです。
おさらいしますと、パリ条約では、明文で、次の出願間での優先権を認めているとされております。
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特許 → 実用(4条E(2))・・・条文から明らか
実用 → 特許(4条E(2))・・・条文から明らか
実用 → 意匠(4条E(1))・・・但し、少なくとも日本語の条文からはそれほど明らかではない。
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その他の類型については各国で決めることが自由である、みたいな説明があります。
さて、意匠登録出願においてPCT出願に基づく優先権を主張できるか、という問題ですが、ざっと審査基準や審査便覧を読んでみた感じでは、それほど決定的な記載はありませんでした。示唆するものはありましたが。。。
念のため、特許庁の窓口に聞いたところ、条文では明文はないけれど、PCT出願に基づく優先権を主張して、意匠登録出願ができる、との回答を得ました。私が電話したわけではないのですが、「できる」とのご回答だそうです。
もちろん、現実的には、その場合でも優先期間は6月ですから、PCT出願(出したときは、特許や実用新案を念頭に置いている)から、6月以内に日本に意匠登録出願をしよう(外国出願戦略の急な変更になります。)と思うことは、ありえないとまではいえないにしても、かなり限定されたケースかと思います。
むしろ仮にPCT出願に基づく優先権を主張したくても、6月すぎていることが通常でしょう。ただ、その場合にも、考えるべき裏ワザ(?)があります。つまり、特許か実用新案で国内移行してから、意匠法に変更すれば、PCT出願から日本にアクションをしなければならないという、問題はネグることができ、期限もPCTの優先日(出願日からではない。)から30月もあるので、手続期間に余裕があります。
この場合にも、もちろん、注意すべきことがいくつかあります。
まず、PCT出願が優先権の主張を伴う場合には、最終的に意匠登録出願になるのであれば、PCT出願が優先日より1年ではなく、6月以外にされたものでなければならないことです。
もちろん、PCT出願において、意匠が適切かつ十分に記載されていなければなりません。通常、特許や実用新案のために作成された図面では、意匠のためには不十分なことが多いでしょう。
また、上記に加えて、さらに、新規性喪失の例外を主張するのであれば、そのタイミングを正しく行わなければいけません。これは特許法と意匠法を手続き面で正しく理解していないと、ミスをしてしまいがちです。
以上、いろいろと、敢えて、事後的に、PCT出願に基づいて、意匠登録を受けることを検討せざるを得ないこととなった場合のポイントについて、いくつか記載してみましたが、もちろん、出願時に、多面的に検討して、意匠で出すべきは意匠として出願戦略を準備しておくべきでしょう。。。
もっとも、アップル対サムソンなどを踏まえ、意匠を活用した攻撃防御が俄かに脚光を浴びるようになってきたので、権利化戦略が事後的に大きな修正を求められるのも仕方がないものと思います。その意味で、臨機応変に顧客ニーズに応えられるように常に勉強して、色々と策を練っておくことが肝要と思われます。