欧州司法裁判所の法務官が胚性幹細胞の特許性についての見解を発表
現在、欧州司法裁判所(ECJ、European Court of Justice)では、EU directive 98/44/ECにおける「人間の胚」の定義について、審理がされています。
その経緯は、ドイツにおいて、グリーンピースが請求したある特許に対する無効審判に関係して、連邦特許裁判所が特許を無効にしたところ、ドイツ連邦裁判所に上訴され、ドイツ連邦裁判所は、当該問題について、欧州司法裁判所に付託したというものです。
この度、2011年3月10日に、ECJの法務官(Advocate General)は、以下のように、この問題に対する所定の判断を与えました。ただ、ECJの法務官の見解は、ECJを法的に拘束するものではなく、単に、独立の立場から、見解をECJに提供するのが、目的にすぎません。ECJは、最終的に独自に判断することになります。
人間の胚について
-受精のその瞬間から、完全な人間になる潜在性があるので、「人間の胚」に分類され、特許適格性がない
-同様に、核移植により成熟細胞の核を卵子に移植して刺激を加えたものも、完全な人間になる潜在性があるので、受精のその瞬間から「人間の胚」に分類され、特許適格性がない
-受精から5日ほどで形成される胞胚期の細胞も「人間の胚」に分類され、特許適格性がない
ES細胞について
-これらとは対照的に、単離された、ES細胞は、「人間の胚」に分類されない。なぜなら、これらは、各臓器に分化することができても、完全な人体になる可能性がないからである。
-ただし、由来を無視することはできない。人体に由来すること自体は問題ではないが、人体を破壊することになる場合には別である。
-したがって、ES細胞などの多能性細胞は、「人間の胚」を破壊することなく入手できる場合でなければ、特許適格性を欠くことになる。
結論として、特許の対象となる技術的なプロセスの適用が、それに先だって、人間の胚を破壊をすることや人間の胚を基本的な材料として使用することを伴う限 り、そのようなプロセスは、人の胚の使用について一切言及することなく記載されていたとしても、発明は特許適格性を欠くことになる。
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