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リモートワーク推奨と庁通知のオンラインの受領のアンニュイな関係


現時点では、日本の特許庁が期限の一律延期をしていないので、ちなみに、欧州特許庁は、私の理解するところでは、すべての出願人および出願代理人を対象に、庁期限延長の通知を行い、2020315日以後の庁期限がすべて2020417日まで延長されました。
https://www.epo.org/…/official-journal/information-epo/arch…
日本でもこのような処置をした方が望ましいとは思います。ただ、ここはいろんな考え方のあるところだと思いますし、システム上の制約が大きいのかもしれないので、とやかくいいません。

ところで日本では、一律延期ではなく、「新型コロナウイルス感染症の影響により、指定された期間内に手続ができなくなった方は、手続ができなかった事情を説明する文書を添付していただくことで「必要と認められる場合」には、指定期間を徒過していても有効な手続として取り扱うものとします。」としています。
https://www.jpo.go.jp/…/k…/info/covid19_tetsuzuki_eikyo.html

「必要と認められる場合」の判断が特許庁(最終的にはもちろん裁判所)に委ねられていますが、その基準に関しては、何ら確立していないので、この規定はまったく怖くてあてにできないというのがもっぱらの評判です。
これに輪をかけているのが、「正当な理由」の基準問題です。期限を徒過した場合に、「正当な理由」があれば、救済するという法的枠組みがありますが、ほとんど救済されないのです。
https://www.jpo.go.jp/…/laws/rule/guid…/kikan_gide_faq.html…

なので、どうしても、提出が当日になるような手続きで、代理人が3名いて、主担当が期限当日に、コロナにかかったような場合でも、リモートワークのために連絡がつかなかったりしたら、救済してくれるのかわかりませんし、弁理士なり事務担当がリモートワーク中に郵送物が送達されてしまい、何もしらないたまたま出社していた方(図面書く人、翻訳する人、秘書さん、外国事務の人、掃除をする人、いろんな人が働いており、たまたまやむを得ず出勤してたりしますが、「送達」の概念が分かっていな人も当然います。)が良かれとおもって受け取った書類が、送達により30日の期限が走り始め、そのことを知らずに徒過したとか、いろんなことが考えられます。代理人がコロナにかかったけれど、出願人がかかっていない場合には、出願人が常時代理人と連絡がつく体制ならば代理人に変わり本人が手続きができたとかいわれたらどうしよう、とか、外国からの出願で、途中をとりつぐ、現地代理人がコロナに影響を何らか受けたときに、どの程度であれば許されるのか、それとも、代理人が現事代理人を介さず直接出願人に連絡するための努力をしていないと許されないのか、まったく、基準もないわけです。さらには、コロナにかかったかもしれないと思い、しかし、保健所は検査してくれるわけでもなく、自宅で我慢して期限を徒過したが、結局コロナではなかったときに、救済されるのでしょうか?

コロナの影響を受けたかどうかについて、穏やかに解釈するべきと思いますが、穏やかにとか、柔軟にとか、述べていないので、責任を負う代理人サイドとしては、安易に依拠できなくて、期限を徒過した場合になってはじめて、ラストリゾートとして検討するものになっています。

ところで、特許庁は発達したオンライン出願システムを構築しており各事務所や各会社と相互にアクセスが可能です。しかし、拒絶理由等の庁通知もオンラインで送られてきますが、現在の運用では、オンラインでアクセスして受け取ることをしていないと、2週間ほど(10営業日かな)受け取らなかったら、強制的に郵送されてくることになっています。

しかし、この運用は、リモートワークを検討する際のネックにはなってみたいです。弊所は私が毎日今のところ来ているのでいいのですが(よくないかもしれませんが)、だいたい特許庁とオンラインで繋げている庁手続端末は、セキュリティの観点からも、スペックの観点からも、多くの事務所が、デスクトップです。そして、各担当者のPCにリモートアクセスをすることはなんとかできても、セキュリティの観点から、(電子証明などもはいっているはずの)庁手続端末は、リモートアクセスを許可するのは、別のリスクも大きく、大いに悩むわけです。また、依頼者によっては、庁手続端末やクライアントへの報告システムが入ったいるPCへの遠隔アクセスを契約上禁止しているところもあります。

なので、結局、強制的な郵送にならないように誰かが事務所なり会社に行かなければならないことになっている事務所や会社は多いと思います。もちろん、現状の運用(法律ではないと理解しています)で生きる者である以上、それは、不要不急ではなく、要務であり急務であるから出勤しろ、といえばそれまでなのですが、政府がリモートワークを奨励しているで、ここがボトルネックにならないようになるといいのかもしれません(今のところ弊所とは関係ない問題であり、私のために主張しているわけではありません。)。

でもこの解決策は簡単です。拒絶理由等の庁通知を受け取っていなくても、10営業日で強制的に郵送するのではなく、30日とか60日とか必要な日数、郵送を留保すればよいだけのことに思えます(受領時に送達され、期限が走る。)。これは大規模なシステム改修もいりません(想像ですがパラメータを設定するだけ。ただ、庁システムが過度に複雑で誰もいじれない者であれば別ですが。)。もちろん、非常事態宣言ではないところに所在する事務所や会社は関係ないともいえますが、別に、特別な利益を与えるものではなく、オンラインで受領できる期間を延ばしているだけなので、問題ないと思います。

そして、これを放置すると、庁通知をオンラインで受領できなかった場合(事務所判断でそのために来なくてよいと決める場合もあれば、うまくリモートアクセスができなかった場合もあるかもしれません。なにぶん不慣れなことをしているわけです。)強制的な郵送になりますが、それでも、受け取らなければ特許庁に返送され、その場合、詳しくないですが公示送達とか、面倒なことになるのではないかと思います。逆に、普段受け取らないたまたま出てきてた方が良かれと思い受け取ると、手続徒過した場合には、コロナに影響を受けた手続きといえるかどうかまたいちいち判断しなければならなくなります。なので、特許庁としても、より行政コストがかかり、より煩雑になるだけだと思うんです。

これは、実は特許庁側もあまり把握していない問題だと思いますので、本来的には出願人サイドや代理人サイドが団体として要望するべきかもしれませんが、全然動いていなさそうという話を聞きました。要望を直接投げた方がいいのかなとも思います(ふだん、人に要求するように生きていないのですが。)。うちは、色々なレイヤーの理由からそれほど影響を受けないのですが、他の事務所と話していると、これで助かると感じるところは多いように聞きます。

もちろん、要務であり急務であるから、出勤せよというのであれば、それまでなのですが、そして、まさにみんなそのようしているのだと思いますが。

なお、このようにコロナ対策で運用を一時的に変えてくれるなら、オンラインで受け取る庁通知のみならず、本来的に紙で郵送される庁通知も発送を遅らせてもいいのではないかと思います。そうすると、欧州特許庁とは異なり、既に立っている期限は延びないにしても、新たな期限が立たなくなるので郵送物のために出勤しなくて済むので安心できます。

もうすぐに対応予定になっていたらたんなる杞憂なのですが、寡聞にて知りません。

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