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SIRモデルをわかりやすく!?

大学1年の時の数学の先生の教え。
『微分のことは微分でせよ(自分のことは自分でせよ)。』
高いエンジニアとしての技術力で独立して飯を食っている尊敬する学生時代の友達から、FBに書き込んだ考察について、お褒めの言葉(!?)を頂いたので、ちょっとSIRモデルについて考えてみたことをメモしておきます。
(お断り)
単なる備忘録として、また、僕のようにまだ自分では考えていなかったけど、なんかSIRがもやっと気になる人向けなので、よい子の皆様は決して読まないでください。
なんだか言葉だけが独り歩きしているSIRモデル。専門家のシミュレーションという怪しいブラックボックスを少し理解しないといけないな思いまして、SIRモデルを高校生の理系くらいでも、わかるように説明できるか考えてみた。2時間くらいしか考えていないので、間違ってたらそのときは(優しく)教えてね。もちろん、モデルなので、パラメータを足せばもっと精緻にはなります。
==========
ある人口集団(村でも島でも国でも)を考える。もちろん、モデルなので均質とする。この人口をNとする。Nは、東京なら1400万人、日本なら1.3億人とかをいれればよい。
S:未感染者(これからかかる人という仮定モデル)
I:感染者(絶賛ウイルス保有中という仮定モデル)
R:回復者(死亡者を含む)(もうかからない人という仮定モデル)
簡単のためNは一定とする。つまり、S+I+R=Nが保存されると考える(実際は、交通事故でNが減ったり、新生児が生まれればNは増える。)。
さて、ある日のS,I、Rとその増減について、考えていきます。
さらに、以下の過程をおきます。
感染者集団が1日あたり1/Tの割合で、回復するとする。
一人の感染者数がm人と出合い、出合った人が、
①未感染者(S)であった場合にはp%の確率で感染させ、
②回復者(R)または感染者(I)である場合には感染させない
と仮定する。
そうすると、一人の感染者が出会う人m人のうち、未感染者の期待値は、m*(S/N)なので、Δt時間(Δt=1日みたいなイメージ)あたりに、新たに感染する人の数ΔInewについて、以下が成り立つ。
ΔInew/Δt=m*(S/N)*(p/100)*I
ここで、mp/100は、当該集団におけるウイルスの基本的な感染力(ここで、特段の対策を講じなければ、という意味で、「基本的な」ということ)を示す。social distanceや手洗いやうがいやマスクによって、mやpを減らせる。便宜上mp/100=kとおく。
そうすると、
ΔInew/Δt=k*(S/N)*I
一方で、Δt時間あたりに、新たに感染から回復する人の数ΔRについて、以下が成り立つ。
ΔR/Δt=I*(1/T)
ここで、感染者の変化ΔIは、新たに感染したΔInewの増加分と感染から回復した―ΔRの減少分の和だから、以下が成り立つ。
ΔI=ΔInewーΔR
よって、
(式1) ΔI/Δt=k*(S/N)*I-I*(1/T)
          =k*I*(N-I-R)/N-I*(1/T)
(式2) ΔR/Δt=I*(1/T)
ここにはk、T、Nを定数と考えれば、変数はIとRしかないわけです。なので、ある日のIとRがわかって、k、T、Nを設定すれば、連立させれば、シミュレーションはエクセルでもなんとかできそうです。

さて、考察です。

まず、kの見積り方法です。感染が初期でどんどん、増大しているときは、(式1)で、N>>I+Rで、また、回復者数も多くないとして2項目を無視して、
(式1A)ΔI/Δt=k*Iと近似できます。
これは、積分すると、
(式1B)I=Io*exp(kt)になります。
これの対数をとると
(式1C)log(I)=log(Io)+ktになります。
よって、対数でプロットすると、日本の集団でのkが予測できます。
日本では、当初7日で倍増していた(1250~2500人も、2500~5000人も7日だった(以下のグラフは、次のサイトからの引用です:参考)ので、自粛要請のでる4月8日くらいまでは、k=1/7と見積もることができそうです。なお、倍加速度だけを問題にできるので、実際の感染者に対する感染報告者の比が一定との仮定をおける限り、その比の値がわからなくてもkが見積もることができるからです。
写真の説明はありません。

ちなみに、欧米では2,3日で倍増していたので、k(欧米)は、1/3~1/2となり、これは爆発的に増加することを意味します。
自粛要請との関係ですが、このkは、世間でいう基本再生産数R0とリニアに関係していますのでR0を8割減らすこととkを8割減らすことは、同じようなものと考えてよいです。4/6日より、自粛要請により、kが、当初のkよりもがぐっと小さくなってk’となることを想定して(政策目標にして)いるようです。本当はkもかくんとk’という定数になるのではなくて、kも時間とともに変化します。ただ、8割という政策目標が妥当であったかは今後の検証が待たれるでしょう。
とにもかくにも、偉い人はこういうSIRシミュレーションをしているのでしょう。もちろん、もっとパラメータをさらに複雑にしているかもしれません。

しかし、しかしですよ。何はともあれ、基本的なパラメータである、本日のRやIをなるべく正しく推定できないと、まったくシミュレーションとしての意味をなさないです。
IとRは、母集団からの標本(サンプル)について、PCRや抗体検査を行うことにより、推定できます。なぜやらないのか全く意味がありません。実際に病院でPCRを図った感染者数の増減にはそれほど重要な意味がないと思います。
ところで、自分でいろいろいじってみた感じでは、このモデルは、単純すぎて、もっと、変数や定数を設定しないと実際上ほとんど役に立たない可能性もあると思いました。少し動かすだけで、大きく結果が違うので、おもちゃみたいなもので、なんとでも予測ができます。各学者の先生がずいぶんと異なるシミュレーションになるのもそのせいかなと思いました。
特に気づいただけでも、
(1)ΔRについて、感染者集団が1日あたり1/Tの割合で、回復するには少し無理があると思いました。むしろ、感染者は、T日後に回復するの方が、良いモデルになるかもしれません。
(2)また、ΔIについても、感染してから感染させることができるようになって、回復するまでの一連の時間的な過程を捨象しすぎていると思います。3つくらいのパターンに感染者集団を分ける必要があるかとも思いました。他の仮定した点も同じです。
(3)また、注意点ですが、そもそも免疫力が強くて、かからない人が一定程度いるような気がします。それは、Sに帰属させるよりもRに帰属させた方が将来のIのシミュレーションとしては、適切になるのではないかと思います。
なお、変数や定数だけ増やして過去と整合性がとれたとしても、机上の遊びで、単なるオーバーフィッティングしただけという問題もあるので、過去と合わせられても、将来を占う力が弱くなる問題もあるかと思います。
そういう意味でも基本的なパラメーターである基本的なパラメータである、本日のRやIをなるべく正しく推定するためにも、ようやく厚生労働省は、無作為「的」な標本検査をするらしいです。遅すぎるかなという感じです。
あと、最後に気付いた一番重要なこと。ちゃんと自粛と感染予防をして、kを抑えないと、シミュレーション上は、1日の感染者数が今の10倍にもそれ以上にもなりかねません。なので、きっちり、自粛と感染予防をしていきましょう!
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